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先月、笑撃のデビューを果たした愛馬・ローレルフルーヴ号の2走目に出撃した。前走で見せた気性の幼さがどこまで改善されているか気になるが、まず無事にゴールすることが前提条件で、好走しつつ経験を積んでくれれば、と気楽に構えた。 半月前に来た時はパドックの枝垂れ桜も固い蕾だったが、今日はほぼ満開。場内の桜もピークを迎える寸前といったところである。来週は桜花賞なので、それまで待って欲しいなあと思いつつ、愛馬の出待ちをするのももう何度目だろう……。顔馴染みになった警備員の方に会釈され、会釈を返す。 パドックのヴィジョンに出走馬のデータが表示されたら間もなく登場。馬体重は前走から増減なし。馬番号も1番違い。几帳面なんだろうか……。例によってパドックの柵に泣かされつつ写真を撮る。ローレルベオウルフ号の応援時に写真係としてケンシロー君を連れて行ったが、一生懸命伸び上がっている時は首から上が柵の上に出ているが普通にしていると頭の切れっ端しか見えないのを写真で証明されたことを思い出し、ムッとする。 ムッとしつつも愛馬を見るとでれりと顔がやに下がる。いかんいかん、みっともない……。トマさんやオシリス?さん等マイミクさんにも応援を頂き、馬仲間からもメールが続々と入る。例によって「またグリーンチャンネルに切れっ端が映り込んでたぞ」であったり「無事の好走をお祈りします」であったりだが、こうして愛馬を気に掛けて頂いているのはとても嬉しい。 レスを返していると横から「またお会いしましたね」と声を掛けられた。警備員の方かと思ってひょいと其方を見たら見知らぬ男性がにっこりしていた。はて?誰だ?記憶の海を泳いでみたが知り合いではない。誰かと勘違いしているんだろうと思い、「失礼ですが何方様ですか?私は貴方を存じ上げませんが?」と聞いた。世の中にはよく似た人が3人は居ると言うから、多分その手の間違いだろうと思ったのである。 「先月、フルーヴとベオウルフの応援に来ていらしたでしょう?あの時2回とも僕も来ていたんですよ。場所もほぼ同じでした。あの時は赤いコートを着ていらっしゃいましたね」げ!先日の恐怖がまた頭を擡げた。「僕もあの2頭を持っているんです。貴女がカメラで追っているので同じ馬を持っているんだと分かりました」うええ……。それでも写真を撮り続ける。木口小兵は死んでもラッパを放さなかった。小小陽はビビッてもカメラを放さなかった。 「クラブではお知り合いになっていないんですが、現地で知り合ったのも何かの縁なんで一緒に観戦しませんか?見たところお一人のようですし」だが断る!ってか、それどころじゃねェよ。もうすぐ騎手が騎乗する。そうしたら動画に切り替えて録るつもりなので音声が入ってもらっては困る。そこに「停ま~れ~」の合図がかかった。まずい! 「申し訳ありませんが、動画撮影に切り替えるので音声が入るとネットにアップできないから話しかけないで下さい」と言い放ち、録画を開始した。前走では騎手が跨った途端に暴れてコータローの如く騎手を振り落とし、ついでに自分もすっ転んだのでヒヤヒヤしながらその挙動を見守った。流石に2走目とあって落ち着いた感じで騎手を背負い、最後の周回をしてから地下馬道に消えて行った。 「じゃ、失礼します」と背中を向け、ゴール前の定位置に移動した。警備員さんのいる所に陣取る。本馬場入場、返し馬、輪乗りに枠入り、発走!まあまあのスタートを切って好位に着け、直線手前で派手な見せ場を作る。しかし、失速。真面目に走ったのはいいが息を入れ忘れたらしい。それでも飼い葉代を銜えて無事に帰って来た。良かった……。 「見せ場はあったけど残念でしたね」と話しかけられて文字どおり飛び上がった。まるで猫ジャンプである。さっきの野郎か!「一緒に観戦しませんか?」と言われて断った。が、しつこくついて来る。今日はこのまま帰ると言うと「じゃあお茶でも」ときた。冗談じゃねェよ人混みに紛れて植え込みの蔭に隠れた。退場口は1ヶ所しかなく、その辺りでうろうろしている。ええい、納豆の糸みたいにしつこいヤツだ……。 まず、目立つ白いコートを脱いだ。その下は黒いワンピース。続いて特徴的な長い髪をクリップで留めてアップにした。お庭番のように植え込みに隠れて変装し、様子を窺う。まだいるよ……。出るに出られない。向こうに数m歩いてくれたらその隙に逃げ出せる。こういう時に焦りは禁物なのでじっと待った。そして、向こうに歩き始めたのを見澄まして退場口を潜り抜けて柱の陰に潜み、暫く様子を窺う。 後方に注意しながら駅に向かい、宝塚方面に行く電車に一旦乗ってから折り返した。もしかしたら本当に馬仲間を募っていたのかも知れないが、あのアプローチではどん引き確定の赤ランプだと何故気付かん……。 多分、次走は淀になるだろう。彼処は退場口が複数あるから大丈夫かな……。
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